現在、私たちは新しい仕組みでの家造りを提案しています。
その仕組みはお客さんにとって大きなメリットになるだけでなく、
大工さんをはじめとする職人さん達にとっても大きなメリットになる仕組みです。
以下、その内容を書いておりますので、読んでいただけると幸いです。

1.頭をぶん殴られた気がしたあの日

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

これまで4棟ほど、ある工務店で同じ大工さんに建ててもらったことがあります。
その大工さんはとても腕が良く、仕事も丁寧な当時50代前半の方でした。
私達はこの大工さんから、小屋組みの提案や、強度的に向上する木の組み方など様々なアドバイスをもらっていました。

家を建てる場合、通常2~3人の大工さんがチームを組んで一軒分の大工仕事をするのですが、そのチームは、リーダー的役割の大工さん以外皆60代です。
2005年頃になりますが、その大工さんが働いている現場で、何気なくこんな質問をしました。

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

「昔ながらの木組みを知っていて、丸太から手刻みで加工する技術ももってるのに、何でそれを若い大工さんに伝えないんです?若い大工さんを入れたらいいのに。」
するとこんな答えが返ってきました。
「今の工務店は人を育てるだけの日当をくれん。だから雇えん」と。
その答えを聞いた時、頭をぶん殴られた気がしました。
それ以来、どうすれば若い職人を育てながら、日本の木の家造りを伝えていく事が出来るのか、と考え始めました。

しかし、大工を目指す若者に一から技術を教えていくのにはお金がかかります。若い大工を育てていく費用が丸々上乗せされて工事費が上がったのではお客さんにとって喜ばしいことではありません。
お客さんにも喜んでいただけ、大工さんをはじめとする職人さんも喜ぶ仕組み、いうなればみんなが喜び、みんなにメリットがある仕組みでないと長続きしないと思っていましたので、全てを兼ね備えた家造りはないものかとまた考え始めました。

2.相反する3社見積り

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

先に進む前にみんなが喜ぶ家造り、私達はこれを「みんなが笑顔になる家造り」と呼んでいますが、ふとしたきっかけでその仕組みを思いつくことが出来ました。 実際に2011年前半2件のリノベーションを行い、続いて同じ年の10月から新築住宅を2件ほど行っています。

この仕組みについて説明するのは簡単なのですが、内容をよりご理解いただくため、又この仕組みを思いついたきっかけ、そして現在の大工さんをはじめとする職人さん達の仕事環境について書きたいと思います。

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

これまで私達の事務所では、家の最終図面が出来上がった段階で、「いい家をお安く」という考えのもと、基本的に3社程度ハウスメーカーや工務店(以下施工業者)に見積りを依頼していました。 そうすることで価格競争を促してきましたが、それはお客さんにとってコストダウンという面では良い事であっても、現場で働く職人さんの収入や技術の継承・育成という面で考えると、はなはだ疑問です。
それは何故か。安い価格で請け負った施工業者の埋め合わせは、職人さんの収入の圧迫という形で賄われている事が多いからです。

そうなるとお客さんにとっては喜ばしい事でも、職人さんにとっては喜ばしい事ではない、という相反する構図となってしまいます。
ましてや若い職人さんを育てることなど、とうてい無理というわけです。

前述した通り、お客さんも喜び、職人さんにも喜んでもらえる、誰も悲しむことなく皆が喜びあえる家造り、このような形での家造りを目指していましたので、3社見積りを取る時でも、ずっと心に何か引っかかるものがありました。

3.職人さんへの質問

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

この「みんなが笑顔になる家づくり」の仕組みを思いついたのは、ある増築工事の見積り依頼がきっかけでした。 2010年、和室1間の増築とリノベーションのお話を頂いた時、小規模な工事ということもあり、3社見積りではなく友人の大工さんに見積りを依頼しました。 しかし、その大工さんはちょうど2、3件たて続けに仕事が入っていましたので、知り合いの大工さんを紹介してもらうことになりました。 「昨年大工仲間4人で工務店を始めたやつがおるよ。そいつを紹介する。色々な所で修行してきとるけえ、腕もいいし木や木組みのことをよく知っとるよ。」という事で、その大工さんと会うことになったのがきっかけです。

初めて会ったのは、とあるファミレス。増築+リノベーション工事内容の説明をした後、余談でこれまで疑問に思っていたことを聞いてみました。以下、羅列してみます。

  1. 「大工さんって自分が手がけた家の完成した姿を見ることある?頑張って手がけた家、
    完成した姿を見たいと思わん?」
  2. 「最近お客さんと大工さん、コミュニケーションとってはいけん流れになっとるけど、
    寂しいと思わん?」
  3. 「お客さんから、いい家を建ててくれてありがとう、と言われたことある?」
  4. 「子供に、この家はお父ちゃんが建てたんで、と言いたくない?」
  5. 「完成した家のお引渡しの時に立ち会いたいと思わん?」

と。

何故こんな質問をしたのかといいますと、最近の家造りについて、ずっともやもやしたものがあったからです。

4.職人さんの現状

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

現在ではご存知の通り、ハウスメーカーや工務店にお願いするケースがほとんどです。しかし本当に手を動かして造っているのは職人さん達で、その職人さん達は施工業者の社員ではなく、下請けとして働いているということはご存知でしょうか?
現在、一般的な仕組みは、施工業者が家一軒受注する度に大工さんや左官屋さん・クロス屋さんなど様々な職人に、一軒いくら、日当いくら、で仕事をしてもらっています。

近年、このような仕組み、いわゆる下請けでやっている職人さんに「やりがい」というものが無くなってきているのではないか、又その家に住むお客さんのために、というよりも、元請である施工業者の方を向いて仕事をするようになってきているのではないか、と思っていたため上記のような質問をしてみたわけです。

現在の職人環境といいますと、

日給は安くなる一方
近年の安値競争のため、職人にしわ寄せがきている。
完成した家を見ることがない
大工工事が終わるとクロス工事や塗装工事が始まるため、次の現場に向かいます。これは工事の効率化を図るためです。
お客さんとのコミュニケーション禁止
お客さんと仲良くなると「お願い、ちょっとここに棚を作って」等言われやすくなります。その場合、材料費等かかった費用は請負契約を結んだ元請が負担することになってしまうので、とても嫌がります。

このような現場、何か寂しくないですか。どんなに頑張っても本当の意味でお客さんの顔を見ることなく、又完成した家を見ることが出来ないなんて…。

5.コミュニケーションの重要性

私達は職人さんとお客さんとのコミュニケーションは非常に大切なものだと思っています。
図面では分からなかったものが、だんだん家らしくなってくるにつれて「ごめん、ここに飾り棚作って」、「お願い、ここに家の鍵や印鑑を置きたいけえ、小さな収納ボックス作って欲しい」等、絶対に出てきます。普通の大工さんであれば、その要望に応えてあげたいはずです。
しかしそういった要望を避けて通る仕組みって、なんか寂しいと思いませんか。

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

そういえば以前こんなことがありました。
棟上が終わっていよいよ明日から本格的に大工工事が始まろうとしている時、工務店の現場監督からこう言われました。「1週間ほど現場を空けます」と。 それはそれで工務店の段取りもありますので、特に気にしてなかったのですが、その一週間後8名の大工さんがやって来て一斉に工事を始めました。
現場に行くとあれよあれよという間に出来ていきます。そして一週間ほとバタバタと工事し、今度は3週間ほど空きました。
そして又8名の大工さんがやってきてあっという間に工事をしていきます。お客さんは現場に来ることが出来るのは日曜日のみ。コミュニケーションも何もあったものではありません。

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

お客さんにとっては一生に一度の家造り。少しは大工さんと話をしたかったはずでしょう。
また少しずつ形になっていく家を楽しみたいと思っていたはずです。大工さんも直にお客さんと話し、お客さんの小さな要望に出来る限り応えたいと思っていたはずです。

しかしお客さんが家造りを楽しむ時間や、些細な要望を叶えてあげる前に、壁は作られクロスを貼る段階になってしまいました。この段取りを考えるのは施工業者です。
確かに作業効率を高めることによってコストダウンを図る事は大切なことだと思います。
しかし何か大切なものを置き忘れているような気がしてなりませんでした。

6.職人さんのやりがいについて

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

このような状況が続くと、職人さんにとっての「やりがい」というものがなくなってくると思いませんか。「いい家を建てる大工になりたい!」と思って一流の大工を志しても、 安い日当で働かされ、完成した家も見ることが出来ず、お客さんとのコミュニケーションも禁じられる…。
その結果として当然のことながら、責任感を持って仕事をしない職人が増えてきてしまいます。「安い日当だから」「お客さんと話したこともないし」、「自分で責任取るわけじゃないから、これでいいか」等、自分の 持っている職人技術でいい家を造ってお客さんに喜んでもらう、という根本的な部分を見失ってしまうでしょう。

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

もちろんお客さんにとっても私達にとってもこの状況はよくありません。 設計段階でとことん話し合い、何度もプランを練り直し、CGや模型まで作成した夢いっぱいの家が、職人さんの責任感の欠如によって満足いかない家になるだけでなく、場合によっては欠陥住宅になってしまう。
結局どんなにいい設計をしても、現場で台無しになってしまうというリスク。

この状況はなんとしても避けなくてはなりません。
ではどのようにすれば職人一人一人が責任感を持って仕事をし、子供に胸を張って「この家お父ちゃんが建てたんで」と言えるようになるのか。 大工さんが「近くに来たのでちょっと寄らせてもらいました」と笑顔で訪問出来る人間関係を築く事が出来るのでしょうか。

7. 中間マージンをなくす!

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

職人さん達の仕事内容は想像出来ると思いますが、施工業者の社員達は、どのような仕事をしているのでしょうか。
ちなみにおおまかな構成を書きますと、社長・現場監督・設計者・営業マン・住宅ローン提案者・事務員(経理)で構成されています。
社長は会社の最終的な責任者、現場監督は工程管理や材料発注、職人の手配等が主な仕事です。設計者、営業マン、住宅ローン提案者、事務員(経理)の仕事内容はお分かりでしょう。

その施工業者としての役割をかんくう建築デザインと大工集団とで分けてみると色々な事が見えてきました。

かんくう建築デザイン
の役割

  • 営業
  • プラン作成
  • 設計
  • 現場監理
  • 住宅ローン提案
  • 完成後の定期点検
  • アフターフォロー

大工(職人)集団
の役割

  • 実際の工事
  • 現場監督
  • 完成後の定期点検
  • アフターフォロー

このように施工業者の仕事内容をそれぞれで分担したことがミソです。

そして大工集団に一般的な施工業者同様、建設業の許可を取り、一職人でなく会社として工務店になってもらいました。

簡単に言えば、考えるのはかんくう建築デザイン、手を動かして造るのは大工集団である工務店。
よりシンプルな形にし、職人のように実際に手を動かさない中間的存在のハウスメーカー等を省いてみました。

いわゆる中間マージンを無くした、ということです。

8.保証やアフターサービスは?

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

ここで心配になるのが、「規模的にも小さいその工務店は、保証やアフターサービス等は大丈夫なのか?」ということです。

その辺りはご安心ください。大工集団といっても工務店ですから、他の施工業者と同じように、家が完成するまで保証する一般的な保険の他に、10年保証や工事保険等も入っています。
又、アフターサービスですが、かんくう建築デザインのシステム通り、1年・2年・5年・10年という区切りで、定期点検させていただきます。

では大工集団だったのが工務店になることで、何が変わるのでしょうか。それは大工の仕事内容が増えたこと。これまで通り手を動かして造るだけでなく、一般的な施工業者同様、定期点検、アフターフォロー等の仕事が増えました。
ちなみにかんくう建築デザインの仕事内容は変わりません。

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

しかし、これまで元請だった施工業者を通さずに直にお客さんと話し合うことが出来るだけでなく、最後まで責任感を持って仕事をした上でお引渡しの時も立ち会える事は、職人さんにとって何よりも変え難い喜びです。

しかも自分達で工事金額を決定し、お客さんと直に工事請負契約を結ぶことが出来る為、日当いくらという計算ではなく、若い大工を育てる時間や費用も、自分達で計画的に作り出すことが出来るようになりました。

9.お客さんにとってのメリット

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

ではお客さんにとってのメリットは何になるのでしょう。

それは工事費を1~3割下げることが出来た事です。

2011年4月、大工集団の工務店に3DKのマンションの全面リノベーションの見積りをお願いしたところ、出てきた金額に驚きました。
これまでの経験で、工事費は800万円程度だと思っていたのが、450万円。

その時に思いました。経費率が一般的な施工業者と違うのだと。

そして2011年10月には新築の見積りをお願いしました。以前同規模で同じような性能、仕上げの家を設計したことがありましたので、その時の工事費から坪単価を計算し、お客さんに概算として提出していた工事費は2,300万円。しかし大工集団の工務店から出てきた見積り金額は1850万円。

いったい何故大工集団の工務店に依頼すると、こんなにも安くなるのでしょうか。

これまでの一般的な家造りでは、職人さん達それぞれが施工業者に提出した見積りの合計金額に2~4割の施工業者側の経費をのせてお客さんに提出をしています。

その2~4割の中には、社員の給料や会社経費、広告宣伝費等が含まれています。

各職人さん達が提出した工事金額の合計を2,000万とします。施工業者の経費が2割の場合
2,000万×1.2 = 2,400万
施工業者の経費が4割の場合
2,000万×1.4 = 2,800万
この400万と800万が施工業者の経費(取り分)となります。

10.無理せずコストダウン

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

では、新たに提案している家造りの仕組みはどうなるでしょう。
大工集団といっても工務店ですから、家の品質を保証するための費用や工事の保険費用、もちろん事務的な経費もかかります。この辺りは一般的な施工業者と何ら変わりないのですが、違うのは全員が大工であるため、原価である2,000万の中に、自分達の給料も入っているということです。
そうなると、2000万以外に必要となるのは、品質保証や保険費用、事務的経費、そして次に繋がる若い大工を育てる費用などです。その金額は合計すると、ざっと0.7割(7%)。

大工集団の工務店経費は0.7割なので
2,000万×1.07=2,140万となります。

いかがでしょうか?一般的な施工業者にお願いするよりも260万~660万工事費を落とすことができます。
ここで一番言いたいのは、無理をせず合理的にコストダウンが出来ていること。
そして何よりも、誰も悲しませることなくコストダウンが可能になったことです。
それだけではありません。
職人さんに仕事のやりがいや、やる気をおこさせ、若い職人さんも育てる事が出来るようになりました。これはお客さんにとっても大きなメリットなのではないでしょうか。

11.最後に

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

何故この仕組みが上手くいくようになったのでしょうか。 それは今の若手大工さんの勉強はもちろんの事、コンピューターを使い、CADも使えるようになったことが大きな要因です。
設計図から、より詳細な図面である施工図をおこしたり、エクセル等を使ってお見積りを作成したり、メールを使って材料を発注したり…。
これまで職人さんが苦手意識を持っていた部分を自分達で克服し、現場監督としての役割も出来るようになった結果、この仕組みが上手くいくようになりました。

広島の建築設計事務所かんくう建築デザインのみんなが笑顔になる家づくり

もちろん、ここまでくるのには相当な努力が必要でした。しかし、その努力した分、より責任感を持って純粋な気持ちで仕事が出来るようになっています。

以上が「みんなが笑顔になる家造り」の全貌です。この仕組みを考え作りあげるまでには時間がかかりましたが、ようやくここへたどり着くことが出来ました。私達がずっと抱いてきた、無理をせず、誰も苦しめることもなく、お客さんも含めてみんなが喜ぶ家造り。
このような家造りはいかがでしょうか。

ちなみに大工さんは言っています。
「下請けの時より収入が増えた」 そして
「以前よりやる気が湧いた」と。