一般的な設計事務所とは

まず家を建てようとする時、ハウスメーカーや工務店、又は建売購入を思い浮かべると思います。

設計事務所はハウスメーカーのように住宅展示場等を持っていませんし、広告を出すこともほとんどありません。
ですから知名度も低いですし、どこに事務所があるのかも分からないでしょう。

しかし、設計事務所に依頼されると、ハウスメーカーや工務店等と違い、広告費や人件費、住宅展示場の維持費等がかからないため、設計監理料を建築費用にプラスしても低コストで済みます。
その為、住宅にかかる費用を抑えることができますし、その分家電製品やカーテン等の購入費にまわすことが出来、大変経済的です。

一般の方にとって家を建てるということは一生の中でおそらく一度ですので、お客様も設計者も一生懸命です。よって設計を進めていく上でお客様と議論する場合もあります。お客様のことを思えばこそ、ハイハイだけで設計を進めていくわけにはいかないのです。

お客様は一生に一度のことなので、どこに依頼して家を建てるか真剣に悩んで欲しいと思います。この時、ハウスメーカーや工務店だけでなく設計事務所から提案を受けてみる、といった選択肢もぜひ加えて、検討して頂けたら幸いです。

以下に設計事務所に頼むとどのようなメリットがあるのか、ハウスメーカー、工務店とどのような違いがあるのかを説明いたします。ぜひ一度お読みになり、参考にしてみてください。

設計事務所に依頼するメリット

1. 設計のオリジナル性

お客様のご要望やイメージ、敷地の条件等を総合的に判断し、ご提案します。
通常、設計事務所の造る家は、ハウスメーカーが建てる家のように商品名がありませんし、決まった工法もありません。その代わり柔軟性があります。又、狭小の敷地等、ハウスメーカー等の標準プランでは対応しきれない敷地に建てることが出来たりします。

人それぞれに顔や性格が違うように、好みや理想も違うはずです。ですから、設計者は様々な条件を総合的に判断して、プランやデザイン、構造材料、断熱材、工法、仕上げ、色彩等検討し、個性ある楽しい住宅を造っていきます。
多くのハウスメーカー等が「フリープラン」とか「自由設計」とかを前面に打ち出していますが、自由になるのは単に間取りだけです。建築の設計が間取りを考えるだけだと思うのは大間違いです。デザイン・構造・仕上げ・使用材料・省エネ・耐震等、多種多様な業務から成り立っています。
間取りはあくまでも基本です。それは全体の仕事量のほんの一部に過ぎません。本当の「自由設計」とは、様々な住まい方の可能性を検討した結果といえるのではないでしょうか。

2. 設計料についてのメリット

家を建てるには当然設計図が必要となりますから、当然コストがかかります。 現地も見なくてはいけませんし、役所との打ち合わせもあります。一般的に設計事務所に頼めば設計料が余計にかかる、もしくは高くなると思っている人が多いようですが、考えてみてください。

ハウスメーカー等では、広告費・住宅展示場の建設費・維持費・人件費等があるはずですが、材料や工事費等にまぎれこませていることによって、分かりにくくしています。ハウスメーカーでは営業経費だけでも工事費の25~35%かかると聞いています。

設計料だけで高い安いと決めつけず、住宅全てのトータル料金(設計監理料含む)で比較検討してみて下さい。ハウスメーカー等と設計事務所を比較検討すると、結局は設計事務所の方が安かった。ということは多々あります。

ちなみに設計事務所の一般的な設計監理料は工事費の10~15%程度です。

3. 独立した現場監理者

テレビ等で、欠陥住宅という言葉を耳にしたこともあると思います。欠陥住宅の原因は手抜き工事や工事業者の知識不足から起こることが多く、設計事務所が適切な工事監理をすることにより、そういったトラブルも未然に防げます。

現場での工事が始まると、設計図通り工事されているか、使用材料に間違いはないか等、様々な検査をします。これを工事監理と呼びます。
設計事務所に依頼する一番のメリットは、設計+監理と、造る業者が完全に別であることです。このことが、良質な住宅を創るためには最も大切なことです。

ハウスメーカーや工務店等、設計と工事一式で頼んだ場合でも、建築基準法上義務付けられていますので、工事監理者がいることになっていますが、ほとんどの場合は建築確認申請上での名前だけの立場にすぎません。つまり、利益優先を考えて、見えないところで手を抜いている、可能性があります。 独立した現場監理者がいるかいないかは、とても重要なことです。

工事管理と工事監理の違い

工事管理とは?
工事をスムーズに進行し、契約期間内に建物を完成させる仕事です。主に現場監督が行います。(工程管理や材料発注、金額管理等)
工事監理とは?
工事が図面通り施工されているか?建築基準法等の法律違反はないか?等を建築士がチェックし、違反があれば施工業者に指示し、是正させることです。

4. 工事費の見積査定

工事見積は様々な項目があって、一般の人にはほとんどいっていいほど理解できないと思います。
設計者はこの工事見積の査定を行います。「どうせ素人が見ても分からない」と思って書く見積書と「プロがチェックするから変なことは書けない」と思って書く見積書、どちらの見積書が、信頼性・透明性が高く、金額が安いかは一目瞭然です。見積書の細かい内容・数量・単価等を総合的に判断し、適切な工事業者を選択します。

設計事務所を選ぶ時の注意点

1. 人柄を見る

家を建てるということはお客様との共同作業でもありますから、気が合ったほうがいいです。
まずはメールや電話での対応の仕方や、ホームページやブログで人柄を感じ取るのも良い方法だと思います。最後には会って決定されるといいでしょう。
お互いがいい気持ちで家づくりをするためには、これが一番大切なことだと思っています。

2. 事務所登録をしている設計事務所

建築士は一級建築士、二級建築士等に分かれています。又、設計を業とする場合は必ず都道府県の設計事務所登録が必要です。
ですから、一級建築士事務所登録番号○○○号という形で必ず登録しています。
きちんと登録している設計事務所をお探しください。

3. 賠償責任保険に加入している設計事務所

設計事務所は任意で建築士事務所賠償責任保険※1に加入することができます。加入するかどうかはあくまでも任意ですので、保険に加入している設計事務所を選ぶようにしてください。※1 建築士事務所賠償責任保険とは?
日本国内において行った設計業務のミスに起因して、建築物に外形的かつ物理的な滅失又は破損事故が発生した時、建築物自体の損害及び他人の身体障害・財物損壊について、法律上賠償しなければならない損害を補償します。(日本建築士事務所協会より引用)

4. 得意なタイプを聞いてみる

建築設計事務所でも、住宅を得意としている事務所から、マンションや工場等を得意としている事務所まで様々です。 家を建てるのであれば、住宅を主に設計している設計事務所で、しかも設計だけでなく、しっかり監理※2も行っているところ、さらに豊富な実績を持っている事務所がベストです。※2 監理とは?
お客様の代理人として現場が図面通り施工されているか、建築基準法、都市計画法等の法律違反はないかを建築士がチェックし、違反があれば施工業者に指示し、是正させることです。

5. 適切な設計監理料を提示する設計事務所

新築の場合、だいたい工事費の10%~15%、リフォームの場合、15%前後です。
あまりに法外な設計監理料を提示する設計事務所は避けたほうがいいでしょう。 まず最初に設計監理料金は何%ですか?と聞いてみるのもいいかもしれません。

設計監理料金はそれぞれの設計事務所のホームページに掲載されていますので、チェックしてみて下さい。

6. デザインだけを優先していないか

設計事務所によっては、見栄えばかりを優先してしまい、構造や耐久性、断熱性、快適さ等がほとんど考えられていない場合もあります。
お客様の立場で、快適な生活空間を提案してくれる設計事務所をぜひ探してみてください。